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福岡地方裁判所 昭和31年(ヨ)202号 判決

申請人 行方成佶 外一六名

被申請人 国

主文

被申請人が昭和三十一年七月十日附で申請人等に対してなした解雇の意思表示の効力はいずれもこれを停止する。

申請費用は被申請人の負担とする。

(注、無保証)

事実

申請人等代理人等は「主文同旨」の裁判を求め、その申請の理由として、「申請人行方成佶は昭和二十四年四月十八日から、同林源四郎は昭和二十二年八月七日から、同吉村孝雄は昭和二十七年十月二十五日から、同上野邦子は昭和二十七年十月十三日から、同松山貞雄は昭和二十二年九月四日から、同山下佳助は昭和二十七年十月一日から、同福元久雄は昭和二十四年二月七日から、同大津山宏は昭和二十五年五月十八日から、同古賀増男は昭和二十四年八月十九日から、同荒木照男は昭和二十六年五月十日から、同井上富士夫は昭和二十五年八月九日から、同松尾明は昭和二十四年六月一日から、同五島昭一は昭和二十六年九月二十二日から、同坂本東吉は昭和二十四年六月十三日から、同鳥井敬之は昭和二十六年八月二十三日から、同吉浦良徳は昭和二十七年十月十日から、同川満礼子は昭和二十九年十一月二十三日から、いずれも板付空軍基地における駐留軍労務者として、被申請人に雇傭されて勤務していたが、昭和三十一年一月二十日附で「保安上の理由」という名目で出勤停止処分を命ぜられ、次いで同年七月十日附で同じ理由によつて解雇された。しかしながら右解雇は次のような理由で無効である。先ず本件解雇処分の根拠になつたのは、日本人及びその他の日本在住者の役務に関する基本契約及び同契約附属協定第六十九号(以下「労務基本契約」「附属協定」と略称する。)である。右労務基本契約及び附属協定は形式的にはアメリカ合衆国駐留軍(以下「米駐留軍」と略称する。)と日本政府間の契約であるが、その内容は駐留軍労務者の労働条件の基準を定めたものであつて就業規則と同様の効力を有するものというべきであるから、米駐留軍が保安上の理由によつて駐留軍労務者を解雇する場合には、当然附属協定による制約を受け、同協定第一条各号に該らないのに保安解雇してはならない拘束を負わされているのである。しかして申請人等はいずれも米駐留軍の保安上危険な労務者でなく、労務基本契約及び附属協定所定基準のいずれにも該当しない。従つて本件解雇処分は労務基本契約及び附属協定に違反しているから無効である、次に、出勤停止当時、申請人行方は全駐留軍労働組合(以下「全駐労」と略称する。)福岡地区板付支部執行委員、同支部運輸分会副分会長、同支部青年文化部長を兼ね、コーラス部、読書会、福岡映画協会(以下「福映協」と略称する。)に所属し、同林は右支部委員、全駐労福岡地区本部委員、同支部運輸分会書記長、同支部コーラス部長を兼ね、青年文化部、コーラス部読書部、福映協に所属し、同吉村は、右支部春日サプライオフイス分会青年文化部長で、福映協幹事を兼ね、青年文化部、コーラス部に所属し、同上野は青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属し、同山下は同支部運輸分会機関紙編集部員で青年文化部、コーラス部に所属し、同福元は右支部幻灯班副班長、同支部運輸分会機関紙編集部員で、青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属し、同大津山は青年文化部、コーラス部に所属し、同古賀は右支部運輸分会機関紙編集部長で、青年文化部、コーラス部、福映協に所属し、同荒木は同支部青年文化部読書会責任者で、コーラス部、福映協に所属し、同井上は右支部委員、同五島は右支部委員、同支部POL分会役員を兼ね、組織教宣部、福映協に所属し、同坂本は右支部委員、同支部春日食堂分会長を兼ね、同鳥井は右支部幻灯班長、春日食堂分会青年文化部長を兼ね、青年文化部、コーラス部、福映協に所属し、同吉浦は右支部運輸分会青年文化部長で青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属し、同川満はコーラス部に所属し、同松山、同松尾は組合役員ではないが、申請人等はいずれも熱心な組合活動家として組合活動をし、前記支部青年文化部において、読書会、コーラス部、福映協等に所属し組合運動の一環であるサークル活動に従事していたが、米駐留軍はかねてから駐留軍労務者の組合運動やサークル活動を嫌忌することが甚しかつたが、これを理由に解雇処分をすることができないので「保安上の理由」という口実の下に熱心な組合活動家やサークル活動家を職場から追放しようとして申請人等を解雇したもので、右解雇処分は憲法第二十八条、労働組合法第七条第一号に違反するものであるから無効である。しかして本件解雇処分により申請人等は組合活動の面で不利益を受けており、且つ賃金を唯一の収入源とするためこれを失つて生活面で困難に直面し、又精神的打撃も大きいのであつて、このままでは償うことのできない損害を受けるおそれがあるので本件解雇の意思表示の効力を停止する旨の仮処分を求める。」と述べた。(疎明省略)

被申請代理人等は、「申請人等の申請を却下する。申請費用は申請人等の負担とする。」との裁判を求め、答弁として「申請人等がその主張の日に板付空軍基地における駐留軍労務者として被申請人に雇傭されたこと、被申請人が申請人等に対し、昭和三十一年一月二十日付で労務基本契約及び附属協定に基く保安上の理由により出勤停止の通知をし、次いで同年七月十日付で同じ理由により解雇の通知をしたことは認める。申請人等に対する本件出勤停止は昭和三十一年一月二十日米駐留軍板付基地労務連絡将校空軍大尉リンカーン・シー・マツケイより福岡県春日原労務管理事務所長宛の附属協定第三条により出勤停止の要求に基きなされたものである。すなわち本件出勤停止は、米駐留軍指揮官において申請人等が駐留軍の保安上危険であるとの証拠又は情報を得たため申請人等を解雇するか否かについて最終的な人事措置を決定するまでの暫定的措置として行われたものである。しかして同年一月二十四日付の前記指揮官から春日原労務管理事務所長宛の通知書によれば、申請人等はいずれも附属協定第一条a項の保安基準中(3)号に該当すると示されているのみで、その具体的事実は示されていない。右解雇理由通知書に対し春日原労務管理事務所長は同年四月六日右に関する意見を回答した。その後同月十四日極東空軍司令部より調達庁長官宛意見の要請があつたので同年五月二十五日調達庁長官から意見を述べたところ、同年六月二十五日指揮官より更めて申請人等の解雇を要求してきたので、同年七月十日春日原労務管理事務所長は申請人等に対し解雇通知を発出したものである。以上が本件解雇に至るまでの経過である。ところで、本件解雇処分については何ら瑕疵はなく有効である。先ず本件解雇は労務基本契約及び附属協定に違反しない。すなわち附属協定によれば米駐留軍が保安上の理由で出勤停止又は解雇の意思決定をするのは合衆国の保安に危険又は脅威となるとの認定にのみ基くのであつて、この認定は専ら米駐留軍の主観的判断に止まり、客観的に保安基準に掲げる事実の存在を要求しているものではなく、しかも右駐留軍の判断の客観的妥当性の評価も許されないのであるから、保安基準に該当する客観的事実の存在は解雇の要件ではないのである。そのことは、元来米駐留軍は日本国に駐留する外国軍隊たる性質上高度の機密保持の必要性があり当該労務者の雇用の継続が軍の如何なる利益に反するかとの点につき具体的該当事実を示すこと自体が却つて軍の安全を脅す結果となるわけであるからこれを明示することを要しないとしていることからしても明らかである。従つて米駐留軍において保安上の理由から労務者を排除する必要があるとする以上、その米駐留軍の決定は最終的なものとして日本政府においてもこれに拘束され、たとえ日本政府において保安基準に該当する事実を確認しなくても出勤停止又は解雇を行わなければならないのである。右のとおりで、本件解雇はまさに労務基本契約第七条及び附属協定所定の手続に基いてなされたものであるから有効であるといわなければならない。次に本件解雇は前述のとおり米駐留軍が申請人等に対していずれも保安基準(3)に該当するものと認定して解雇を要求したことに基いてなされたものであつて、申請人等主張のように申請人等の組合活動やサークル活動を理由としたものではないから不当労働行為ではない。申請人等は組合において相当重要な地位を占めていたというわけではなく、又賃金、作業時間等の労働条件の改善要求或は人員整理の徹回要求等の問題について組合幹部として駐留軍又は労務管理事務所に対し直接交渉するなど特に駐留軍を刺戟する程活溌な組合活動があつたわけでもないし、又たとえ申請人等が組合活動の一環として映画、読書、コーラス等の純然たる文化活動を行つたとしても、駐留軍の利益と何の関係もないことであるから、米軍がこれに基いて保安解雇を要求するというようなことは常識上考えられないところからでも明らかである。」と述べた。(疎明省略)

理由

申請人等が、いずれもその主張の日、板付空軍基地における駐留軍労務者として被申請人に雇傭され勤務していたこと、昭和三十一年一月二十日付で「保安上の理由」ということで出勤停止の通知を受け、次いで同年七月十日付で同じ理由により解雇の通知を受けたことは当事者間に争がなく、疏乙第十八、第十九号証の各一、二によれば、右解雇は附属協定第一条a項の(3)に定める基準に該当するものとしてなされたものであることが一応認められる。

申請人等は本件解雇は労務基本契約及び附属協定に違反し無効であると主張するのでこの点について考えてみる。

先ず附属協定が申請人等主張のように就業規則と同様の性格を有するものであることは弁論の全趣旨に徴し当事者間に争がないから、右協定に掲げる保安基準並びにこれに関する人事措置についての定めは、駐留軍労務者と日本政府及び米駐留軍との間においても拘束力を有するものであり、駐留軍労務者を保安解雇するには、右協定に定める所に依拠しなければならないものと解するのを相当とする。

しかして疏甲第二号証によれば附属協定第一条a項において保安基準として、(1)作業妨害行為、牒報、軍機保護のための規則違反又はこのための企図、若しくは準備をなすこと、(2)アメリカ合衆国の保安に直接的に有害であると認められる政策を継続的に、且つ反覆的に採用し若しくは支持する破壊的団体又は会の構成員であること(3)前記(1)号記載の活動に従事する者又は前記(2)号記載の団体若しくは会の構成員とアメリカ合衆国の利益に反して行動をなすとの結論を正当ならしめる程度まで常習的あるいは密接に連繋することの三基準が掲げられていること、並びに、同条b項第三条、第五条c項ないしe項において、日本側の提供した労務者が第一条a項に規定する保安基準に該当するとアメリカ合衆国側が認める場合には米軍側の通知に基き最終的な人事措置の決定があるまで当該労務者が施設及び区域に出入することを直ちに差止めるものとし、右人事措置の実施細目として、(イ)米軍の指揮官が労務者が保安上危険であるとの理由で解雇するのが正当であると認めた場合には当該指揮官は米軍の保安上の利益の許す限り解雇理由を文書に認めて労務管理事務所長に通知し、所長は三日以内にそれに関する意見を通知する。(ロ)当該指揮官は更に検討した上、嫌疑に根拠がないと認めればその後の措置をとらないが、なお保安上の危険を認めた場合は上級司令官に報告する。(ハ)上級司令官は調達庁長官の意見をも考慮の上審査し、保安上危険でないと認めれば復職の措置を、保安上危険であると認めれば解雇の措置をとるよう当該指揮官に命ずる。(ニ)上級司令官から解雇の措置をとるよう命ぜられた当該指揮官は労務管理事務所長に対して解雇を要求する。(ホ)労務管理事務所長は当該労働者が保安上危険であることに同意しない場合でも、解雇要求の日から十五日以内に解雇通知を発しなければならないと規定されていることが認められ、右認定によれば(1)ないし(3)の保安基準に該当するかどうかの判断は一応米軍の主観的判断に委ねられているものであつて、保安基準に該当する事実が客観的に存在する場合に限定する趣旨ではないこと、従つてその主観的判断が客観的に妥当なものであることを要する趣旨ではないと解するを相当とする。ところで、本件解雇の理由となつている申請人等を引き続き雇傭することが米駐留軍の保安上危険である事実の存在については、証人菊地水雄の証言によつてもこれを首肯せしめるに足りず、他にこれを認めるに足りる疏明は存しないから、かかる事実はなかつたと認めざるを得ないのであるが、附属協定においての解雇権の行使について該事実が客観的に存在したか否かは問うところでないこと右説示のとおりであるから、その趣旨において本件解雇が附属協定に違反した無効のものといえないことは当然である。

次に申請人等の不当労働行為の主張について判断する、疏甲第五ないし第九号証、同第十三ないし第二十一号証並びに証人吉田貞郁(第一回)、同松村善之助、同重松鶴来、同橋本明の各証言及び申請人行方成佶、同林源四郎の各本人尋問の結果を綜合すると、申請人行方は昭和二十八年二月十一日全駐労福岡地区板付支部に加入し、同支部委員をしたことがあり、出勤停止当時は、支部執行委員「同支部運輸分会副分会長、同支部青年文化部長を兼ね、コーラス部、読書会、福映協に所属していたこと、同林は、昭和二十八年二月十一日組合に加入し、右支部執行委員、全駐労中央委員、福岡地区本部執行委員をしたことがあり、出勤停止当時は支部委員、福岡地区本部委員、支部運輸分会書記長、支部コーラス部長を兼ね、青年文化部、読書会、福映協に所属していたこと、同吉村は昭和二十八年三月五日組合に加入し、出勤停止当時は春日サプライオフイス分会青年文化部長として、女子組合員の多い組合活動の困難な同職場で活躍し、青年文化部、コーラス部に所属し、福映協の幹事をしていたこと、同上野は昭和二十八年三月五日組合に加入し、青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属していたこと、同松山は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、表面的な組合の役職にはつかなかつたがストライキには常に先頭に立つて活動していたこと、同山下は昭和二十八年二月十一日組合に加入し出勤停止当時右支部運輸分会機関紙編集部員で、青年文化部、コーラス部に所属していたこと、同福元は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、出勤停止当時支部幻灯班副班長、支部運輸分会機関紙編集部員を兼ね、青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属していたこと、同大津山は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、出勤停止当時青年文化部、コーラス部に所属し昭和三十年十一月食堂関係ウエイトレンの人員整理反対闘争には率先活躍したこと、同古賀は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、出勤停止当時支部運輸分会機関紙編集部長で青年文化部、コーラス部、福映協に所属していたこと、同荒木は昭和二十八年三月五日組合に加入し、支部執行委員、消防分会委員長、中央代議員をしたことがあり、出勤停止当時青年文化部読書会責任者で、コーラス部、福映協に所属していたこと、同井上は昭和二十八年三月十四日組合に加入し、支部執行委員、支部板付食堂分会長をしたことがあり昭和二十八年末から昭和二十九年二月にかけての軍直接雇用者年末闘争、ベースアップ闘争、昭和三十年四月の職場明朗化闘争、同年十一月の軍直接雇用者の人員整理反対闘争に板付地区食堂従業員を指導し、出勤停止当時は支部委員をしていたこと、同松尾は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、その所属するAIO(設営隊)塗装分会は比較的組合活動の不活溌な分会であるが終始右分会の維持に努力してきたこと、同五島は昭和二十八年三月五日組合に加入し、支部執行委員、POL分会書記長、中央代議員をしたことがあり、出勤停止当時は支部委員、POL分会役員を兼ね、組織教宜部、福映協に所属していたこと、同坂本は昭和二十八年六月十一日組合に加入し、支部委員、春日食堂分会長をしたことがあり昭和二十八年十月の職場明朗化闘争を始め数次の闘争を指導してきたこと同鳥井は昭和二十八年六月十一日組合に加入し、軍直接雇傭女子従業員の多い食堂分会の指導に努力し、昭和三十年二月春日食堂分会員瓜生三千代、池田昭雄の不当解雇を福岡労働委員会に提訴した際組合側証人として軍に不利な証言をしたこと、出勤停止当時支部幻灯班長、春日食堂分会青年文化部長を兼ね、青年文化部、コーラス部、福映協に所属していたこと、同吉浦は昭和二十八年二月十一日組合に加入し、出勤停止当時運輸分会青年文化部長をしており、青年文化部、コーラス部、読書会、福映協に所属していたこと、同川満は昭和二十八年三月十四日組合に加入し、前記上野邦子を助けて活躍し、コーラス部に所属していたこと等上記申請人等はいずれも熱心な組合活動家として組合活動をしていたこと、及び板付支部青年文化部において、読書会、コーラス部、福映協等に所属しサークル活動に従事していたこと、右サークル活動は昭和二十九年中の三度のストライキを契機として組合員たるの故を以つて不利益な取扱を受ける者等が出でたのに原因して組合員が萎縮し或は他の労務者の組合に対する関心が稀薄となつた結果組合が弱体化したので、これが挽回のため組合の主軸として青年層を結合しようという目的で、第十八回支部委員会において執行部の提案した昭和三十年度運動方針案に特に青年文化活動が挿入され、右運動方針案は第三回支部定期大会で可決されて作られた青年文化部において運営され、爾後重要な組合活動の一環として申請人等の努力により活溌に推進され、これが効果を最大にして組合の強化と拡大に上昇気運を齎してきつつあつて、今その活動を阻止するにおいて事実上又も組合自体が萎縮する状況にあつたこと、昭和三十年十二月二十日、申請人林、同古賀、同吉村、同上野、同川満外一名が、同月二十一日申請人行方、同鳥井外一名が犯罪特別調査局(O・S・I)の調査を受け、コーラス運動の実体について尋問されたがその約一カ月後に本件出勤停止が発令されたこと、右出勤停止により申請人等の組合活動が事実上抑止された上、青年文化部員及び一般組合員に組合活動に対する畏怖心を生じ、組合活動は沈滞していることが認められる。

本件解雇においてその理由とすべき保安基準該当の事実が存しないことは既に認定したとおりであり、更に右認定の諸情況の下になされた米駐留軍における解雇要求、ひいては本件解雇は、実質的には申請人等の労働組合運動を理由とするものと認めざるを得ない。従つて被申請人の本件解雇の意思表示は労働組合法第七条第一号に該当するものであつていずれも無効である。

最後に本件仮処分の必要性について考えてみるに、現下の社会事情において労働によつてのみ生計を維持している労働者が解雇によつてその職を失つたものとして取扱われることは著しい損害を蒙るものといわなければならないから、この損害を避けるため本案判決確定に至るまで右解雇の意思表示の効力を停止すべき必要があるといわなければならない。

してみれば申請人等の本件仮処分申請は理由があるからこれを認容し、申請費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中池利男 生田謙二 丹野達)

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